最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)3162号 判決 1950年5月23日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人笠原忠の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。
所論の如く、本件犯行の発覚した当時は本件醪は未だ完全に醗酵していなかったとしても、被告人は醪を製造するに要する諸般の手段を終ったものであるし、醪製造に要する諸般の手段を完遂した以上は、あとは時の経過によって自然に醪が出来るのであるから本件犯行の発覚したのは醪製造に要する諸般の手段を終ってから一日を経過したに過ぎない爲め醗酵作用は未だ完成しなかったとしても所罰要件は具わるものと爲すべきである。論旨は独自の見解にすぎないから採用できない。
よって旧刑訴法第四四六條により主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)